21世紀文学の創造   岩波書店

1  現代世界への問い 筒井 康隆 編

21世紀に入り,人間や社会のありかたが大きな変革を迫られているなか,現代の文学はどこへ向かうのか.「文学」の概念を根源的に問い直し,世界と人間と 言葉の新たな関わりを考察する.表現の現場から未知の時代を生きる思想や感性を探り,言葉の力の回復をめざす.本シリーズの“序章”.

2  「私」の探究  今福 龍太 編

「私」とは何か.「私」はどこにあるのか.「私」をどのように語るのか.文学の根源的課題である「私」を問い,「私」を探究する様々な方法的冒険を試み る.多層化し,越境する現代の「私」をラディカルに探究し,物語や虚構の問題から,身体,政治,歴史といった幅広い課題にふれ,文学表現の臨界を考察す る.

3  方法の冒険 筒井 康隆 編

文学における方法とは何か.文学の主題と方法はどのような関わりをもつのか.詩,小説,戯曲…,そしてSF,推理小説,ホラー…,文学はさまざまな方法を 生み出し,世界を描いてきた.20世紀の古典から現在のweb小説まで,多様に展開する文学の方法的冒険とその脱構築を問い,現代の表現の新しい可能性を 探る.

4  脱文学と超文学 斎藤 美奈子 編

70年代以降「文学」はかつての求心力を失い,さまざまな形に分化,進化しました.純文学からベストセラー,漫画まで,さらに文学と“ポップ”の関係, ケータイ言葉,学校で習うブンガクからタレント本,本の装幀,そして文学賞,文芸雑誌の現場まで,本巻では文学を取り囲む制度を具体的・多角的に検証しま す.文学にサバイバルはあるか?

5  境域の文学 今福 龍太 編

「日本語」で書くことが,「日本」という国家,言語,文化の連続性に批判的視点を提示する文学表現とは.「在日」文学,翻訳,移住者の文学など,異文化性 をはらむ日本語表現を論じ,文学の新しい可能性を問う.執筆=津島佑子,梁石日,吉増剛造,四方田犬彦,リサ・ヨネヤマ,鄭暎惠,喜納育江,丹生谷貴志ほ か.

6  声と身体の場所 高橋 康也 編

文学の衰弱は言葉の身体性の喪失にあると言われて久しいが,一方で近年,詩や芝居,音楽などが,先鋭的な表現者を得て,ジャンルを超えた活況にある.そこ では逆に,鋭く「文学」なるものの位置が問われている.現場での表現者の発言から先鋭な批評まで,人の「表現」はどこへ行くのか,言葉を身体から考える試 み.

7  男女という制度 斎藤 美奈子 編

フェミニズムによって性とジェンダーのあり様は大きく変わった.私たちは「男」「女」をどのように見つめるのか.恋愛小説,エンターテインメント,教育, 少年少女文学で変わりつつある「らしさ」の表現やストーリーの分析から,文学と美醜の関係,マンガやネット上で逆転し過酷に消費される男女イメージまで, 具体的に現状を考える.

8  批評の創造性 高橋 康也 編

20世紀の文学は批評と創造の現場が多元的に交錯し,表現の新たな多様性を生んだ.20世紀文学を総括し,文学作品の批評性を根源的に問いながら,批評理 論の展開をふまえて作品の創造的読みの可能性を追求する.執筆・石井辰彦,宇野邦一,島弘之,坪内裕三,蓮實重彦,保坂和志,松浦寿輝,室井光弘,若島正

9  ことばのたくらみ 実 作集
―― 実作集 ―― 池澤 夏樹 編

いま,文学作品を書くとはどのような行為なのか.言葉とは,読者とは,文学の形式と方法とは.文学に対する根源的問いを,創作の先端で活躍する詩人と小説 家が実験作を書下ろし,批評としてではなく,実作を通して考える画期的な試み.小説,詩といったジャンルの壁をとりはらい,日本語と日本文学を挑発する作 品の饗宴.

別巻  日本語を生きる 谷川 俊太郎 編集協力

谷川俊太郎,高橋源一郎,平田俊子が小説,詩,戯曲の3種競技に挑んだ.ルールは「それぞれに何らかのかたちで〈56歳,男性,高田さん〉を登場させる」 というもの.彼らはまったく違うこの3つとどう格闘したのか? 創作+発表後の鼎談で創作の秘密や現在の文学,日本語について具体的に語り合う,かつてな い1冊.


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