開高 健

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開高健
開高 健(かいこう たけし、1930年12月30日 - 1989年12月9日)は日本の作家。

[生涯]

大阪市天王寺区で父・正義、母・文子との間に長男として生まれる。7歳の時に住吉区北田辺(現・東住吉区)へ転居。1943年4月に旧制天王寺中学校 (現・大阪府立天王寺高等学校)へ入学、5月に国民学校教頭であった父が死去する。

第二次大戦後旧制大阪高等学校文科甲類(英語)に入学するが、学制改革により翌年大阪市立大学法文学部法学科(現・法学部)を再受験し入学し直した。大学 在学中、谷沢永一主宰の同人誌『えんぴつ』に参加。

21歳で同人仲間であった詩人牧洋子との間に長女道子が誕生し翌年結婚する。 壽屋(現・サントリー)に勤務していた牧洋子の紹介で大学卒業後に同社宣伝部に採用され、PR誌『洋酒天国』の編集やウイスキーのキャッチコピー(トリス の「人間らしくやりたいナ」が有名)を手がける。この時代に『裸の王様』で芥川賞を受賞、これを機に壽屋を退職し、執筆業に専念。

1964年、朝日新聞社臨時特派員として戦時下のベトナムへ。南ベトナム政府軍に従軍して最前線に出た際、反政府ゲリラの機銃掃射に遭うも生還。総勢 200名のうち生き残ったのは17名であった。『輝ける闇』『夏の闇』『花終わる闇(未完)』の3部作はこの戦争での凄烈な体験をもとに書かれている。

熱心な釣師としても知られ、日本はもちろん世界中に釣行し、様々な魚を釣り上げ、『オーパ!』、『フィッシュ・オン』など釣りをテーマにした作品も多い。 現在では浸透している“キャッチアンドリリース”(釣った魚を河に戻す)という思想を広めたのも開高だと言われている。

食通であり、食と酒に関するエッセイも多数。

1989年、食道癌の手術後、『珠玉』を脱稿するも再入院、食道腫瘍に肺炎を併発して死去。享年58。

開高を記念して、ノンフィクションを対象に「開高健賞」が創設された。

[受賞歴]

1958年 -『裸の王様』で芥川賞を受賞。
1968年 -『輝ける闇』で毎日出版文化賞を受賞。
1979年 -『玉、砕ける』で川端康成文学賞を受賞。
1981年 - 菊池寛賞を受賞。
1987年 -『耳の物語』で日本文学大賞を受賞。

[開高健 主要著作]

[小説]

(短編※は初出年。長編は刊行年)

あかでみあ めらんこりあ(1951年)
パニック※(1957年)
巨人と玩具※(1957年)
裸の王様※(1957年 翌年、第三十八回芥川賞受賞)
流亡記※(1959年)
日本三文オペラ(1959年)
ロビンソンの末裔(1960年)
片隅の迷路(1962年)
青い月曜日(1965年)
輝ける闇(1968年 毎日出版文化賞受賞)
夏の闇(1972年)
新しい天体(1974年)
ロマネ・コンティ・一九三五年※(1978年)
玉、砕ける※(1978年 翌年、第六回川端康成文学賞受賞)
歩く影たち(1979年)
耳の物語(1986年 翌年、第十九回日本文学大賞受賞)
珠玉※(1990年)
花終る闇(1990年)

[エッセイ・ノンフィクション]

(カッコ内は刊行年)

日本人の遊び場(1963年)
ずばり東京(1964年)
ベトナム戦記(1965年)
私の釣魚大全(1969年)
フィッシュ・オン(1971年)
オーパ!(1978年)
最後の晩餐(1979年)
もっと遠く!(1981年)
もっと広く!(1981年)
オーパ、オーパ!(シリーズ。1983年より順次刊行)
生物としての静物(1984年)
※「ベトナム戦記」から「もっと遠く!」「もっと広く!」に至るルポルタージュ文学により、第二十九回菊池寛賞受賞(1981年)。

[関連項目]

サントリー

ベ トナム戦争

[関連人物]

井伏鱒二 ※文壇、趣味である釣りの両面、公私にわたって親睦。
開高道子 ※開高健長女。エッセイスト。
佐治敬三 ※サントリー社長(のち会長)。公私にわたって親睦。
谷沢永一 ※評論家。同人誌「えんぴつ」時代からの親友。
牧羊子 ※開高健夫人。詩人。
長谷川龍生 ※詩人。開高・牧と、公私にわたって親睦。
向井敏 ※同人誌「えんぴつ」時代からの親友。
山口瞳 ※作家。寿屋(現・サントリー)宣伝部時代は同僚。
小田実 ※作家。ベ平連の活動に参加。
秋元啓一 ※カメラマン。ベトナム戦争に同行、後に釣行をともにし、公私にわたって親睦。
菊谷匡祐 ※翻訳家・文筆家。作家生活の初期から公私にわたって親睦。
坂根進 ※サン・アド(広告代理店。サントリーのシンクタンク)社長。寿屋宣伝部時代は同僚。
柳原良平 ※イラストレーター。寿屋宣伝部時代は同僚。(アンクル・トリスが有名)
坂本忠雄 ※文芸雑誌新潮元編集長。開高健記念会会長。

[関連リンク]

開高健記念会

コレクシオン 開高健(蔵書目録など)


向井敏 『青春の闇・開高健』
1992・1999 文芸春秋
松岡正剛の千夜千冊


[著書]

開高健 全ノンフィクション 全5巻 文藝春秋

1 「河は眠らない」
「私の釣魚大全」「フィッシュ・オン」を中心とする釣エッセイの集大成。  


2 「叫びと囁き」
 「過去と未来の国々」「声の狩人」「ベトナム戦記」「サイゴンの十字架」からの海外ルポルタージュ。 


3 「路上にて」
  「ずばり東京上・下」「日本人遊び場」よりルポ。 


4 「孔雀の舌」
 「新しい天体」などから「食」に関するエッセイ。 


5 「言葉ある曠野」
 「世界カタコト辞典」「人とこの世界」より。





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